連載小説 追憶の旅     「第4章  別れのとき」
                                 作:夢野 仲夫

「第4章  別れのとき」

    (本文) 「恵理の初めての経験」

 別れの時146 通算1111 「恵理、
 向こうに見えるホテルに入るよ。」派手なネオンを点滅させたラブホテルであった。恵理は泣きじゃくりながら頷いた。
 一つ一つの部屋が駐車場とセットになっていて、他の客と顔を合わせることなく入れるホテルであった。 恵理は部屋に入るとすぐに良に抱きついた。
 「リョウ君、恵理はとっても幸せ。この日が来るのをずっと待っていたの…。」 涙に濡れながら、恵理は良の首に手を回して、その瞳を閉じた。

 別れの時147 通算1112
 それはすべてを覚悟した女を感じさせた。切ない程の愛おしさで良の胸は震えた。
 彼は堪らず唇を重ねた。女らしい仄(ほの)かな甘い香りがした。長いキスであった。
 「恵理、風呂に入る?」
 「はい。」良の傍を離れるのが片時でも惜しそうに風呂の準備をする恵理。その姿に今までと違う恵理を感じた。
 常に不安を抱えたような自信の無さを感じさせる恵理であったが、彼の心を得たという自信が芽生えたのであろうか。

 別れの時148 通算1113
 「恵理、先に入って…。」
 「リョウ君が先に…。」良は恵理の服を脱がせようとした。
 「恥ずかしいから電気を消して…。」良は部屋のライトを暗くした。恵理は彼のなすままにしていた。
 飲んだワインの勢いもあったのだろう。美紀の部屋で見た恵理の健康的な肌がすべて露わになった。
 「あの夜以来だね、恵理。」黙って頷(うなず)いた恵理。
 「リョウ君も脱がせてあげる…。」慣れない手つきで良を脱がせる恵理。

 別れの時149 通算1114
 大人しく、控え目の彼女の意外に大胆な行為に良は驚いた。しかし、最後の一枚を脱がせるのをためらった。
 彼が自分で脱ぐと恥ずかしそうに顔を背けた。
 「さぁ、入るよ。」良は背後から抱きしめて、恵理を風呂場に連れて行った。
 恵理は寡黙(かもく)になった。異性と風呂に入った経験のなさがそうさせていた。すべて良に身を委ねているようであった。
 「恵理、覚えている。『志乃』で俺に『ナイスバディなのよ。』と言ったこと…。」

 別れの時150 通算1115
 「覚えてないもん…。」
 「君の言っていた通りだ。素晴らしいスタイルだ…。」
 「恥ずかしい…。」 そう言いながら、彼女は胸を強調するように、良の前に見せつけた。湯船に浸かったまま、良は恵理の胸に唇を這わせた。
 「あ〜ん。」恵理の口から甘いため息が漏れた。恵理のため息で良はさらに欲望が膨(ふく)らむのであった。 堅くなった乳首にも容赦なく良の唇と手は動いた。
 「あなたに会えて良かった…。」恵理の目から再び涙が流れた。

 別れの時151 通算1116
 恵理は良をじっと見つめた。何か言いたそうであった。
 「何、恵理?」「…。」言いにくそうであった。
 「聞きたいことがあるんだろう?」
 「…美紀にもお手紙を書くの?…」
 「絶対に書かない。」
 「ホント?リョウ君、ホントね。」ずっと心に引っかかっていたのだろう。揺れ動く恵理の女心であった。
 「リョウ君。」「なに?」
 「背中を流してあげる。あちらに座って。」嬉々として良の背中を洗う恵理。

 別れの時152 通算1117
 意図的であろうか、時折胸を彼の背中に押し当てた。柔らかな感触が彼の背中を刺激した。
 「こちらを向いて。」大胆にも彼を正面に向かせた。彼のいきり立っている下半身から、一瞬顔を背(そむ)けた。
 しかし、その後は何もなかったかのように、彼の上半身から足の指の先まで洗った。その手つきはわが子を洗うような優しさが込められていた。
 「ここはどうすればいいの?」いきり立つ下半身を洗うことも辞さぬ恵理に、良は驚きを隠せなかった。

 別れの時153 通算1118
 恐る恐るではあったが、良の指示した通りに恵理は従う意思を示した。ボディソープを手にたっぷりつけた恵理の手は、慣れない物に初めて触れる恐怖を、必死に克服しようとしていた。
 良は恵理の乳房に手をやった。そして、固くなった乳首に軽く触れた。
 「あ〜ん、ダメ、洗えなくなるぅ…。」恵里は甘い切ない声を漏らした。 それがまた、良の恵里への愛しさを深めていた。

 別れの時154 通算1119
 「今度は私が…。背中を向けて、恵里。」
 「はい。」素直に良に従う恵里。アルコールとラブレターに酔っているようであった。良はゴシゴシ背中を擦(こす)った。
 「もっと優しくして、リョウ君…。」
 「ごめん、ついつい力が入って。」 若い新婚の夫婦のような会話であった。
 正面を向かせて上半身から足の指まで、してもらったと同じように良は恵里の体を洗った。

 別れの時155 通算1120
 若いみずみずしい肌は、良の手の跳ね返すような弾力性を感じさせた。
 「キレイだ、本当にとってもキレイだ。見とれてしまう。」「ホント?」
 「恵里が自分でナイスバディだと言ったのも分かる…。」
 「そんなこと言ったことないもん。」 良が乳房に唇を這わせると、身体をぐったりとさせて、断続的に悦びの声を上げた。
 彼が秘部に浴用洗剤をつけた手で触れても、ぐったりとしたままであった。恵里の決意の強さと意志の強さを垣間見た思いであった。

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