その9 「湯砥里館(ゆとりかん)」

 松山市から33号線を久万高原町方面に向かって行くと、松山市との接した町が砥部町である。焼き物が好きな人は「砥部焼き」をすぐに連想されると思う。食べ物を期待していたアナタには誠に気の毒ではあるが、「砥部焼き」というのは、決して鉄板焼きでもお好み焼きでも、まして二重焼きでもない。

 さて、世の中にはさまざまな物を集めている人がいる。マニアとか収集家と言われている人である。私もある物を収集しているので、収集家の気持ちは十分理解できる。

ざっと、代表的な収集物と列挙すれば、切手、絵画、書、刀剣、骨董品であろう。中でも切手には私は造詣が深い。42円切手、63円切手、84円切手の三種類があり、私は二種類は常に持っている。どうです、完璧でしょう。エッ、これだけではないって?それに普通の切手をどんなに集めても収集家とはいえないって?知らなかったぁ。他にどんな切手を集めればいいの?でも、まぁいいかぁ。これを否定されても私の自信はみじんもゆるがないから。まだまだ切り札があるもんね…。

 切手は認めるとしても、書にはうるさいですよ。小学生の頃の、書初め、夏休みの宿題でしょう。特に書初めはレアです。冬休みは短く、お年玉をもらうことばかり考えていたのでこの宿題は相当辛かった。だから、1年生から6年生までのすべてを収集している方は素晴らしい収集家であると言えます。エッ、これも違うって?一体どんな書を収集すればマニアと言われるの?私には到底理解不能です。それでもなお私の自信はゆるがない。まだまだ切り札があるから…。

 実を言えば骨董品こそ私の得意な分野です。これなら万人に認めてもらえると自信を持って言える。結婚当初に買ったお皿、鍋、茶碗をずっと持っている。十分これで骨董品マニアと認めてもらえるでしょう。

 これもダメって?なぜですか?何十年も前のものですよ。一年、二年前の物じゃないですよ。数百年単位の古い物でないと骨董品とは言えないなんて、誰がそんなバカなことを言っているんですか?十年一昔と言うじゃないですか。この論で言えば三昔、四昔前ですから十分骨董品じゃないですか。

でも、これで認めてもらえなくても私の自信はびくともしない。とっておきの切り札があるから…。

一般的な物で認めてもらえないのなら、「スニーカー」の収集はどうでしょう。これこそマニアの中のマニアでしょう。足が二本しかない私なのに二足もスニーカーを持っている。左右合わせれば四つもある。だから十分収集家と言えると、これこそ自信を持っている。エッ、これもダメって?何時でも誰でも簡単には手に入らないようなレアな商品を持ってないと収集家でなはないって?

そういえば私の知り合いにスニーカーのマニアがいますが、何十足ももっているらしい。彼の話を聞くと前世はムカデだったという。先祖返りで揃えるのを収集家というのかなぁ。しかし、彼の気持ちは十分理解できる。なぜなら私も究極の収集家の一人であるだけでなく、彼の前世返りという強い動機を十二分に理解できるから…。

私の収集しているものは何かって?ウダ、ウダ言わずに究極のコレクションとやらを聞かせろって!じゃ、私がアナタに教えたら私のコレクションに協力してくれますか?くれますよね!その約束は絶対ですよね!

 ところで、アナタは昔からの格言を知っていますか?
「お金がカタキの世の中、あぁ、カタキが恋しい」

 実は私の集めているのは一万円札です。どうです?究極のコレクターでしょう。さっきの約束を守ってくださいよ!

 

 「砥部湯砥里(ゆとり)館」   住所 伊予郡砥部町宮内   ナトリウム泉

 あまり大きな温泉ではなく、どの設備もこじんまりしている。しかし、それでも「イモを洗うように」込み合うことは少ない。この温泉は少し小高いところにあり砥部の町を一望できる。湯船にゆったりつかりながら見る風景は気持ちを和ませてくれる。

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