その12 「指宿温泉 砂むし会館 『砂楽(さらく)』」

 私には3つの自信がある。一つはガラスのように強い意思、2つ目はサメのように明快な頭脳、3つ目はノミのように強い心臓だ。この3つが揃っている者はざらにはいない。天下無敵である。

 数年前に行った、あの有名な温泉が今回のテーマである。テレビでもよく放映される超有名な温泉のために行ったことはなくても耳にした人は多いはず。私も一度はぜひ行ってみたいとかねてから思っていた。

 数年前のことだからあいまいな記憶だと指摘する人がいるかも知れないが、何せ私の頭脳はサメのように明快なため細かなところまで鮮明に覚えている。さっき食べた昼食が「冷やしうどん」であったことさえ明言できるほどの記憶の良さである…。これだけですべての人が私の記憶の良さを認めるであろう。

 砂風呂に入るのは裸かと思っていたら浴衣のようなものを渡された。柄は決してライオンでもラクダでもなかった。自分で言うのも気が引けるが、さすがである。柄がライオンとかラクダでないことまで覚えているのであるとは!!

 他のお客さんが無神経に海岸に降りて行く中で、私は初体験のために細心の注意で降りた。決して気が小さいからではない。前述のように私はノミのように偉大なかつ強い心臓を持っている。初体験でも決してビビルものではない。あくまでも細心の注意を払っているだけである。他のお客は無神経で繊細さのカケラもないだけである。

 「根性なしと言われたくないので、一番には絶対に出ない」とあるお客さんが話していた。これを聞いて私は奮い立った。私こそ一番に砂の中から出るものか!私には他の人が持ち合わせてないガラスのように強い意志があるのだから、他の人に負けるわけがないではないか?

 勝負の結果は明らかである。結果を待つ必要はない。「戦わずして勝つ」という言葉は、まさしくこういうときの言葉である。自信たっぷりに私は砂をかけてもらった。それも「他の者より多い量」を追加してもらったのである。

 うっ!これは熱い!想像以上である。熱いのが大嫌いな私にとっては火傷をしそうに感じるくらいの熱さである。この熱さに係わらず、「気持ちいい!」と「のたまっている」御仁がいる。何ということだ。アンタの肌は石か鉄か!

 繊細な柔肌を持つ私には今にも死にそうである。しかし、私のガラスのように強い意志がそれを我慢させる。何度も禁煙ができるほどの強い意志の持ち主であるから、他の人の追随を許さない。

 ところがである。私のサメのような明晰な頭脳が強烈に働いたのである。柔肌の私がガラスのように強い意志でこれに耐えると火傷をすると…。ガラスの意志とサメの頭脳とが私の中で激しい葛藤をしたのである。

 その結果、当然のことではあるが、サメの頭脳がホンの4、5分で勝ったのである。砂から最初に出たのは私であった。決して「根性なし」が生んだ結果ではない。私の類まれな頭脳が働いた結果である。さすが自分!さすが自分の頭脳!自分を褒めてやりたい。

 指宿温泉 食塩泉、含炭酸鉄泉(摺ガ浜)
  鹿児島県指宿市湯の浜五丁目25番18号

 薩摩半島の東南端の海岸沿いの温泉。全国的に有名な砂むし温泉。ホームページを見ればその効能に驚くほどである。私はそれを知らずに行った。マスコミで盛んに取り上げられているから一度は入ってみたいという人も多いはず。

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