食べ物評論家田部亭 空家 (たべて からいえ)の

 温泉評論その26「清正温泉」

 最近、恐るべき野望を抱いている。それは妄想に近いほど大きな野望である。せっかちな君のために、今回は結論から言おう。日本を独り占めする、という野望である。

「無理、無理!」と即座に拒否する君。そういう短絡的な、かつ弱気な、そして夢のない君の姿勢・態度が今日の日本をダメにしている。人は夢を持たなければならない。夢がなければ生きてはいけない。う〜ん、我ながら素晴らしい台詞(せりふ)だ。

 何とか私一人でそれを実現する方法がないかを考えた。人の助けに頼っていては、私一人のものではなくなる。それでは、日本のすべてが半分になってしまうではないか。私の類まれなサメの頭脳が縦横無尽に働く。我ながら見事という他はない。その結果、一人で実現する方法を発見したのである。

 それを述べる前に、予想される日本の人口推移について書かなければなるまい。厚労省の出生率を元に計算すると、紀元3500年には、日本の人口は1人になる。これで鈍感な君でも結論は分かるでしょう。日本を独り占めするのは実に簡単である。3500年まで長生きすればいいだけのことである。超鈍感な君でもこれは理解できるだろう。

 サメに勝るとも劣らない私の明晰な頭脳は、この広い、優雅な温泉に浸ることによって、さらに明晰(めいせき)さを増していく。改めて自分の凄さを認識せざるを得ない。

 「一体どうやって、3500年まで生きるのか?バカじゃない!」言ってくれるな、お母っさん。たったいま、私もそれに気が付いたのだ。200 〜300年なら何とかなる。私のガラスのように強い体力と、紙風船のように強い心臓があれば…。しっかし、1500年は、ちと厳しいような気がする。  

 私の決断力の早さは、すぐにそれを諦めさせた。さすがである!自分の賢明さに我ながら驚く他はない!君たちもぜひ見習って欲しい。

 だが、決して他の案が無いわけではない。この温泉は私の身体の細胞の隅々まで活性化させ、ことに脳の働きを良くしてくれるようだ。すぐに次の名案が思い浮かんだのである。私の代で無理なら、私の子孫にそれを託すのである。

 どうやるのかって?実に簡単である。可能な限り、私の子孫を増やすのである。そして、全国各地に子孫を派遣させる。そして、その地でネズミ算式に子孫を増やすのである。「な 〜んだ、意味ないじゃん!」とこれまた短絡的に結論を出す、そこの君。私の思惟(しい)をもっと聞くべきだ。

 各地方に派遣した「田部亭 空家(たべて からいえ)」一族は、その土地、土地で5人組み制度を作る。そして、5人組の長にはすべて「田部亭 空家(たべて からいえ)」と名づけるのである。

 それだけではない。「田部亭 空家(たべて からいえ)」と名乗るためには最低でも300人の子孫を残すことを義務付ける。これならスケベエ、もとい国家を憂う私の遺伝子をついでいる子孫ならば、かる 〜く実現可能だ。そうすれば人口がどんどん減少する中で、「田部亭 空家(たべて からいえ)」一族だけは増加の一途をたどることになる。

 一族の団結をはかるために、参勤交代を実施する。これは広く言えば公共事業の役割を果たし、公共交通関連、宿泊施設、観光地などの需要を喚起する。参勤交代といえば、暗いイメージを持つだろうが、決してそうではない。年に一度の義務化された観光旅行と考えればいいのである。観光旅行関連の経済に与える裾野は広いはず。(たぶん)

 もちろん、各地の「田部亭 空家(たべて からいえ)」一族のニーズに応える参勤交代の制度にするのである。飲むのが好きなグループは酒を、ゴルフが好きなグループはゴルフを、食べることが趣味のグループには最高の食べ物を…心行くまで堪能させるのである。

 外交政策も明確である。鎖国など論外で、平和外交に徹する。万一、日本を攻めてくる国があれば、そこにも「田部亭 空家(たべて からいえ)」一族を派遣して、そこで子孫をネズミ算式に増やす。そうすれば、その国も実質的に、我が「田部亭 空家(たべて からいえ)」一族のものとなる。その現実を見れば、どこの国も怖くて日本に手が出せないはずである。 私の頭脳はますます冴(さ)えていく…。

 もっと、もっと書きたいことはある。だが、君たちの考える力を奪うことになるので、後は君たちに委(ゆだ)ねる。

 天然温泉「清正の湯」
 住所:愛媛県今治市高橋甲1350−1
 泉質: ラドン・ナトリウム・炭酸水素塩 施設:高温源泉・白絹の湯・
    露天風呂・電気風呂・うすめ湯・薬 湯など多彩。休憩室も広い。
 料金:大人500円

カウンタ


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