連載小説 追憶の旅  「第2章  千晴との出会い」
                                 作:夢野 仲夫

 千晴との出会い106 通算421
 良はいつの間にか眠りに落ち、夢を見ていた。
  「リョウ君、人に迷惑をかけてはダメよ。」
  「リョウ君、男の値打ちはお金の出し方にあるのよ。お金を出すときはすっと出すのよ。」
  「リョウ君、悪者の家というのがあってね。どんな悪者が住んでいるか恐る恐る見に行った人がいるの。すると、その家で何かが起きたとき、『私が悪かった』『私が悪かった』と、そのお家の人はみんな自分が悪かったと言うの。
 だから悪者の家」それは何度も何度も子守唄変わりに聞かされた言葉だった。

 千晴との出会い107 通算422
  「母さん、俺は母さんが望んだ人間とはまるで違う人間になっている。俺は周りの人をドンドンダメにしている。母さんごめん…。」  夢に中で良は母に何度も許しを乞(こ)うた。
  「リョウ君大丈夫、あなたはきっと母さんの望む人間になるから…。」
  「どんなことがあっても、母さんはいつもリョウ君のそばにいるのよ。」
 「母さん、ごめん。」−良の頬に涙が流れた。

 千晴との出会い108 通算423
  「リョウ君、リョウ君。」−遠く近く彼を呼ぶ声がした。
  「うん、母さん。」 顔を埋めていた胸から見上げるとそこに千晴がいた。 千晴は目から涙がこぼれていた。
  「リョウ君、夢をみていたのね。母さん、母さんと呼んでいた。ごめん、ごめんと謝っていた。」
  「わたしをお母さんと間違えていたのね…。」−愛(いと)しい子を見る優しい眼差(まなざ)しであった。

 千晴との出会い109 通算424
 千晴は自分が涙していることを忘れて彼の涙を唇で拭(ふ)いた。
  「わたしのリョウ君…」 彼の顔を自分の胸に抱きしめた。
  「恥ずかしいよ、やめてくれ!」「ダメ!」
 彼は乳を求める幼子のように彼女の乳首を吸った。
 「ああ…。リョウ君ダメよ!それはダメ!ああ…。」  
 彼は舌で彼女の乳首舌をはわせながら、反対の乳房に触れた。

 千晴との出会い110 通算425
  「ああ…ああ…。」彼女の口から愉悦(ゆえつ)の声が続いた。淫靡(いんび)な空気が部屋を支配した。
  「好きよ、リョウ君、好き、好き、リョウ君…。」  快感が言葉を呼び、その言葉がより大きい快感を呼ぶ連鎖の中に陥っているようだった。
  彼の手が下半身に伸びると、千晴は顔を左右に振った。 健康的な美しい彼女の太腿(ふともも)を何度も何度も撫でた。
 薄いショーツが越えられぬ二人を隔てる壁になっていた。

 千晴との出会い111 通算426
  「汗かいちゃった、わたしシャワー浴びる。後でリョウ君もシャワーを浴びたら…。」
  「俺いつもシャワーだから風呂に浸かりたいな。折角いい機会だからね。」
  「湯を入れておいてあげる。」 彼女はショーツの上にホテルのタオル地のガウンを羽織って風呂に向かった。 良はしばらくして風呂に向かった。
 「ダメ!リョウ君、恥ずかしいから入っちゃダメ!」  シャワーを浴びながら、恥ずかしさに良に背中を向けた千晴を後ろから抱きしめた。

 千晴との出会い112 通算427
  「ダメ〜、リョウ君ダメ…。」 彼が後ろから乳房に触れると彼女の声は次第に消え入りそうになった。
  「強引なんだから…。」 口では彼を非難しながら、それが本心でないことは明らかだった。
  「一緒に湯船に入ろう、キャピー。君と俺との思い出になる。」
 「絶対に見ないでね。約束よ。」 彼は千晴を背中から抱きしめたまま湯船に浸かった。

 千晴との出会い113 通算428
 湯船に浸かったまま彼は千晴の正面を向いた。彼の下半身が身体に触れる度に千晴は身体をよじった。
  「バストが大きいんだね。こんなに豊かなバストだとは思わなかった。」
  「あなたは小さいのが好きなのでしょ…。」 意外な言葉だった。
 「なぜ?そう思うの?」
  「だって、美津…ううん、そんな気がしたから…。」 彼女が美津子を想像しているのがひしひしと伝わった。しかし、彼女は必死でそれを抑えていた。

 千晴との出会い114 通算429
 彼女の一途さといじらしさに、良は戸惑いと限りない愛(いと)しさを感じた。
  「キャピー、立ち上がって君をすべて見せて。」
  「恥ずかしいこと言わないで!」
 「君のすべてを見たい。スタイルのいい君のすべてを見たい。」
  「ダメ!無理、無理!」 良は嫌がる千晴を立ち上がらせた。
 下半身を隠す千晴の手を無理やりはがした。 目の前の千晴のすべてが露(あらわ)になった。

 千晴との出会い115 通算430
  「恥ずかしいことさせるのね。」−彼女はずっと彼を見つめていた。
  「綺麗だ、本当に綺麗だ、キャピー。」 「もういい?」
 「ダ 〜メ。君の綺麗な身体をもっともっと俺の網膜に残しておきたい。」 彼女の顔は恥ずかしさと、良に見られている快感からだろうか、明らかに上気していた。 彼はそっと彼女の陰毛に唇を触れた。
 「リョウ君のエッチ…。」―良はそれだけで満足だった。彼を失わないと確信した千晴にとっても忘れられない思い出の日となった。


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          第2章 千晴との出会い(BN)
 (0316〜) 華やかなキャピー(佐藤千晴)との出会い「広松食堂」
 (0320〜) 千晴との初めてのデート
 (0329〜) 美しいゆえにに悩むキャピー
 (0351〜) 2回目のデート「蕎麦処 高野」
 (0371〜) 海が見える高台で…
 (0383〜) 手打ちうどんに喜ぶキャピー「手打ちうどん 玉の家」
 (0396〜) 過去に縛られる良への怒り
 (0410〜) ラブホテルでの絆
 (0431〜) 夜の初デート「和風居酒屋 参萬両」
 (0439〜) 良のアパートで…。
 (0471〜) 恵理・美紀と「手打ち蕎麦処 遠山」 
 (0481〜) 美紀のマンションで長い夢
 (0531〜) キャピーと初めての1泊旅行
 (0545〜) 2人で入った寿司屋に美津子が…「寿司 徳岡」
 (0556〜) 美紀と得意先に営業
 (0582〜) キャピーとの別れの真相
 (0611〜) 美紀が恵理に宣戦布告「イタリア料理 ローマ」


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