連載小説　追憶の旅　　　　　「第５章　 新たな出発」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 作：夢野　仲夫
 ＊リンクに間違いがありました。

　登場人物とあらすじ
１章：美津子との再会(１〜３１４)　学生時代、大恋愛の末に別れた美津子の幻影から逃れられず、ずっとその幻影を追い続ける良(りょう)。その彼女に２０年ぶりに出会う。一方、妻子ある良に心を寄せる部下の恵理と彼女の親友の美紀。良を巡る３人の女性の愛憎を描く。

２章：千晴との出会い(３１５〜６３０)　大学を卒業してサラリーマンになった良が通う食堂で知り合った千晴。通りすがりの人が振り返るほどの美貌を備えた彼女。美津子との過去に縛られた良と千晴の想い出を織り交ぜながら、恵理と美紀との絡み合う愛。

３章：良の苦悩(６３１〜)　２０年前に別れた美津子との出会いが良の心を悩ませた。さらに千晴の化身のような美紀とひたむきに良を慕う恵理との間(はざま)を揺れ動く良。良をめぐる三人の女性の愛。

５章：新たな出発(１２８１〜)　良の周りに起こる目まぐるしいほどの様々な出来事。良の新たな出発とは？

「第５章　 新たな出発」

　　　(本文)　　おでん屋　志乃

　新たな出発１４１　通算１４２１
　「リョウ君がキレイだ、若いと褒めたから母は舞い上がって…、うふ。」彼の目にもその様子が思い浮かぶようであった。
　「でも、本当だ。君があの年齢になっても、あんなに若くてキレイだと想像するだけで、俺も嬉しいなぁ…。」
　「わたし…母よりキレイだもん。もっとキレイになるわよ、うふ。」言いながら良にキスを求めた。
「　リョウ君、お風呂に入ろ。わたしを見たい？」自信に満ちた恵里がいた。

　新たな出発１４２　通算１４２２
　あの控えめなで楚々とした恵里が、風呂の中でも少しずつ大胆になっていた。女としての自信が生まれたのであろうか？それとも良に限りなく愛されているという自信からであろうか？
　「読んで貰えないラブレターを美津子に書いていたとき、背後から抱きしめてくれた恵里を思い出すよ…。」
　「あの時は声をかけるのを躊躇ったほど落ち込んでいた。」
　「あの時は悲しいだけだった。しかし、いま思うと豊かな胸だった…。」
　「相変わらずエッチねぇ。」

　新たな出発１４３　通算１４２３
　「もっと触っておけば良かった。ああ、残念。」
　「触る勇気も余裕もなかったでしょ。」
　「そうさ。美津子のことで頭が一杯だったから…。それに…。」
　「それに？」
　「わたしから見れば、子どものような君に好かれているとは夢にも想像もしなかったよ。」
　「リョウ君は鈍感。わたし、ホントは知っているのよ。」
　「何を？」
　「リョウ君に憧れている若い社員はもっといるわ。」「へぇ…。」
　「でも、みんな遊び半分。」

　新たな出発１４４　通算１４２４
　「あの部長はステキだとか、あの課長はどうだとか品定め。」
　「そんなことを言っているんだ。」
　「リョウ君は常に人気がいい上司に入っていたわ。」
　「知らなかった…。」
　「それだけではないのよ。経験豊富な人は『仕事の鬼の部長はきっとマゾの傾向がある』なんて話もしていた。」
　「君はそれを黙って聞いていたのか？『違います。極めてノーマル。私が確認した』と言わなかったの。」

　新たな出発１４５　通算１４２５
　「リョウ君のバ 〜カ、言えるはずないでしょ。それとも言って欲しい？今度、電話で言いふらそうかなぁ。うふ。」
　「止せよ、今のは冗談…。女性だけでなく、若い男どもも噂をしているようだ。わたしの耳には詳しいことは入らないが…。」
　「どんな噂ですか？」
　「男の興味は美人度だろう。それにバスト大きいとか小さいとか…。」
　「男ってエッチねぇ。」
　「女も一緒じゃないか。」

　新たな出発１４６　通算１４２６
　良が乳首に唇を這わせると、「ア 〜ン…。」恵里は小さく悦びの声を漏らした。
　「恵里もエッチじゃないか。」
　「反則よ、それって…。」恵里は甘える表情で良を睨んだ。
　「人気ナンバーワンの女性は美紀でしょ。誰でも分かるわ…。」
　「そうらしい…。それに君と…確か総務部の何と言ったかなぁ…。」
　「前田さんでしょ…。そうだ、前田彩乃だった。君と同じように清楚な感じの子だと思うが…。」

　新たな出発１４７　通算１４２７
　「今度、花村に言っておこう。恵里の後釜に彼女をよこせって…。」
　「ダメ！絶対にダメ！」
　「なぜ？」
　「男は女を見る目がないのね。彼女は虫も殺さない顔をしているけど…有名なのよ。」
　「ウソだろ？」
　「本当なの。女性はみんな知っているわ。リョウ君の部下になったら、きっとあなたを狙うわ。」
　「狙われたいな…。あんな美人なら。」
　「許さない、リョウ君！」彼女は軽く握っていた良の下半身を強く握った。

　新たな出発１４８　通算１４２８
　「痛いッ…。」
　「浮気すると、もっともっとひどいわよ、うふ。」
　彼らは風呂の中でも、まるで新婚のカップルのようであった。幸せ一杯の恵里と話しながらも、良の頭の片隅には、次の仕事が重く澱んでいた。
　「リョウ君、いっぱい可愛がってね…。」ベッドで甘える恵里。良は沈みがちであった。
　「どうしたの、リョウ君？何か元気がないみたい…。毎日は会えないから、リョウ君をいっぱい、いっぱい感じておきたいのにぃ…。」

　新たな出発１４９　通算１４２９
　良がいつものように体の隅々まで舌を這わせると、
　「ア 〜ン、感じるぅ、トロけそう…。」恵里は悦びの声を挙げ続けた。彼が重なると、まるでそれを待っていたかのように体を開き、良の動きに合わせていた。それは意識的か無意識か良には区別がつかなかった。
　二人だけのリズムが生まれつつあった。それは二人以外には区別のつかない独特のリズムであった。恵里の敏感な体は反応が激しかった。

　新たな出発１５０　通算１４３０
　悦びに耐えられない声をあげた次の瞬間に、
　「イクッ！」体を硬直させて失神した。同時に果てた後はたおやかな空気が流れた。
　「はぁ、はぁ…恵里は幸せ…。こんなにもリョウ君に愛されて…。」息を整えながら、
　「はぁ、はぁ、リョウ君、わたし気がかりなことがあるの。聞いてもいい？」
　「なに？」
　「志乃のママさんの言葉が頭から離れないの。思うことって何？」
　良はどぎまぎした。しかし、今言えば何かが起こるような不安があった。

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　　　　　　　第４章　別れのとき(BN)
　(０９６５〜)　親友花村部長と４人で「寿司屋　瀬戸」
　(０９８６〜)　恵理の葛藤
　(０９９６〜)　レイクサイドホテル
　(１０３１〜)　美津子との距離
　(１０４６〜)　美紀のマンションで
　(１０６６〜)　恵理との小旅行
　(１０８３〜)　「日本料理　池田」
　(１０９４〜)　「恵理へのラブレター」
　(１１１１〜)　「恵理の初めての経験」
　(１１７６〜)　美津子の秘密「和風居酒屋　参萬両」
　(１１９６〜)　 美紀への傾倒
　(１２２１〜)　 最後のメール
　(１２５５〜)　江戸蕎麦「悠々庵」　＊リンク間違いをまたまた

　　　　　　　　第５章　新たな出発(BN)
　(１２８１〜)　恵理の引っ越し「おでん屋　志乃」
　(１３０６〜)　焼き鳥屋「地鶏屋」
　(１３６１〜)　恵理の新天地
　(１４０８〜)　おでん屋　志乃